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スピン軌道トルク(SOT)磁化反転は、将来の磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)のための次世代技術として最も有望な技術です。SOT磁化反転の適用により、高速書き込み動作、低消費電力、高耐性が達成されます。しかしながら、ドット形状磁気トンネル接合(MTJ)を用いた従来のMRAMでは、磁気的安定性や外部磁界耐性に弱いことが高密度化に向けた課題でした。
これらの課題を克服するために、図1に示すような端部に磁荷が発生しないリング形状MTJを適用した磁気的に安定なセル構成を新しく提案しました。このセルは基本的にリング形状MTJ、リング形状セレクタ、書き込み用トランジスタ、垂直方向に延びた円筒形状SOT配線から構成されます。リング形状MTJでは閉磁気回路が形成されるために、情報保持状態のための静的磁気安定性が向上し、外部磁界耐性が改善します。
リング形状MTJのSOT磁化反転挙動については、今までほとんど明らかにされていませんでした。そこで、それを明らかにするために、マイクロマグネティック・シミュレーションを使ってSOT磁化反転挙動を調べました。リング形状MTJの記憶層のSOT磁化反転挙動解析の結果から、図2に示されるように、汎用的なMTJ材料であるコバルトを使った場合において、安定な一斉SOT磁化反転を示すことが分かりました。さらに、図3に示されるように、SOT磁化反転電流密度(Jsw)が、SOT磁化反転時間に対して反比例することが分かりました。このことはリング形状MTJのSOT磁化反転がマクロスピンモデルで記述されることを示しています。
また、上述したマクロスピンモデルを用いた磁化解析計算により、磁気情報保持エネルギー(⊿E)と臨界SOT書き込み電流密度(Jc)を評価しました。その結果から、⊿EとJcはリング形状記憶層の半径(R)、高さ(L)、層厚(t)等の調整によりスケーリング最適化できることが分かりました。
本成果は2025年1月に開催された2025 Joint MMM-Intermag conferenceで発表されました。
文献
[1] M. Yoshikawa et al., 2025 Joint MMM-Intermag Conference, FR-05, New Orleans, LA, USA (2025).