大容量ストレージを活用した記憶検索型AIによる画像分類技術をECCV 2022で発表

  • 2022年11月2日
  • キオクシア株式会社

キオクシア株式会社は大容量ストレージを活用したAI技術(記憶検索型AI)による画像分類技術を開発しました。本技術は、大容量ストレージに蓄積した学習データを知識として参考にするニューラルネットワークを用いて画像を分類するものです。これにより、ニューラルネットワークの課題の一つである「破滅的忘却」を回避し、知識の追加・更新をしても、画像分類の精度を高く維持することが可能になります。本技術は、テルアビブ (イスラエル)で開催されるコンピュータビジョン分野のトップ学会の1つであるEuropean Conference on Computer Vision 2022(ECCV 2022)にて、10月25日(現地時間)に口頭発表しました※1

従来のAI技術では、ニューラルネットワークが重みと呼ばれるパラメータを学習の過程で調整することで、さまざまな知識と能力を獲得します。しかし、一度学習したニューラルネットワークが、さらに新たな知識を獲得するには、最初から学習し直すか、新たな知識を追加で学習することになります。そして、前者では時間や消費電力のコストが大きくなり、後者では知識を追加するためにパラメータを変更することとなり、習得済みの知識や能力を失う破滅的忘却の問題がありました。

今回提案する手法は、ニューラルネットワークを用いた画像分類におけるコストや精度の課題を解決するため、大容量ストレージに大量の画像データ、ラベル、画像の特徴量※2などの情報を知識として記憶し、ニューラルネットワークがストレージに記憶された知識を参考にして、画像を分類します(図1)。この方式では、新しく入手した画像のラベルや特徴量のデータをストレージに追加することにより知識が追加・更新できます。そのため、ニューラルネットワークの再学習や破滅的忘却に繋がるおそれのあるパラメータ変更が不要になり、画像分類の精度を従来方式よりも高く維持することができます。さらに、ニューラルネットワークが画像を分類する際にストレージの中で参考にしたデータを可視化することで、分類結果に対する根拠を示すことができ、AIの説明可能性※3の改善やブラックボックス問題※4の緩和が期待できます。また、参照したデータを解析することで、参照された頻度によって、知識の有効性を評価できる特長もあります。

キオクシアは「『記憶』で世界をおもしろくする」というミッションのもと、画像分類だけでなく他の領域にも応用範囲を広げ、大容量ストレージを活用したAI技術(記憶検索型AI)の研究開発を進めていき、AI技術・ストレージ技術の発展に貢献していきます。
 

図1 大容量ストレージを活用した画像分類方式

記憶検索型AIについて

ECCVについて

European Conference on Computer Vision (ECCV)は、コンピュータによる画像・映像処理技術を扱うコンピュータビジョン分野のトップ学会の1つです。近年では深層学習を用いた画像分類や物体検出などのAI技術に関する研究成果の発表が注目を集めています。本年度の口頭発表枠の採択率は2.7%でした。

 

  1. 発表論文: ”Revisiting a kNN-based Image Classification System with High-capacity Storage”
  2. 画像の特徴量: ここでは、ニューラルネットワークの演算を通して得られる多次元(例: 1,024次元)の数値データ
  3. AIの説明可能性: AIが導き出した結果の根拠や理由を、人間が解釈できるように説明することの可能性
  4. ブラックボックス問題: AIがどのような過程を経て予測結果に至ったかは人間にはわからず、ブラックボックスと化している問題
     
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