「TEZUKA2020」プロジェクトチームが 2020年度 人工知能学会 現場イノベーション賞・銀賞を受賞

  • 2021年 6月22日
  • キオクシア株式会社

キオクシア株式会社は本日、AI技術と人間でマンガの神様・手塚治虫さんに挑む新作マンガ「ぱいどん」の制作に取り組んだ「TEZUKA2020」プロジェクトチームが、2020年度人工知能学会現場イノベーション賞・銀賞を受賞したことを発表しました。

人工知能学会現場イノベーション賞は、実生活やビジネスの現場における実問題に関して人工知能技術により解決した事例を評価し、その研究開発を遂行した個人や団体を表彰するものです。今回の受賞は、マンガのあらすじである「プロット」と「キャラクターの顔」をAI技術を活用して生成し、新作マンガを完成させたことが人工知能を創造的作業に活用した事例として高く評価されたものです。

キオクシアは今後も、AI技術を用いた創造的作業の支援に取り組むとともに、メモリ事業における生産効率や品質向上のためにAI技術の活用を図っていきます。

受賞者

氏名(所属)※順不同・敬称略

松原 仁(東京大学)、栗原 聡(慶應義塾大学)、迎⼭ 和司(公立はこだて未来大学)、川野 陽慈(慶應義塾大学)、中島 篤(キオクシア株式会社)、国松 敦(キオクシア株式会社)、⽯渡 正⼈(手塚プロダクション)、⼿塚 眞(手塚プロダクション)、筒井 ⼤介(Wunderman Thompson Tokyo)、折原 良平(キオクシア株式会社)

「TEZUKA2020」プロジェクトについて

人工知能による人の発想支援に関する研究開発の一環として、芸術家の作風を機械学習した作品制作が試みられています。「TEZUKA2020」はAIと人間が連携して、現代日本を代表する芸術であるマンガを制作するプロジェクトです。マンガでは、絵、キャラクター、ストーリー、セリフ、コマ割り、フキダシなど数多くの要素が組み合わされます。今回は重要な要素である「プロット」と「キャラクターデザイン」の原型をAIが提供し、それに基づいて人間が作品を制作するというAIと人間の共同作業で新作マンガ「ぱいどん」を完成させました。

新作マンガ「ぱいどん」、プロジェクトの詳細は下記ウェブサイトをご覧ください。
https://brand.kioxia.com/ja-jp/tags/tag9.html別ウィンドウ

人工知能学会現場イノベーション賞の詳細はこちらをご覧ください。
http://www.ai-gakkai.or.jp/about/award/#INNOVATION別ウィンドウ

受賞した取り組みの概要

プロット生成

1話完結型の手塚作品130作のストーリーを13のフェイズに分解したプロットデータを用意し、AIに作家性と作品性を学習させ、AI自らストーリーの骨子となる「プロット」を生成しました(図1)。試行を経て生成した100を超えるプロットの中には、普通の人では思いつかないような意外性のある内容もあり、プロジェクトメンバーによる議論を経て、「ぱいどん」に採用されたプロットが選ばれました。

図1 プロット生成手順

キャラクターデザイン生成

キャラクター生成では“本物らしさ”を学習することで本物に近い画像を生成することができる敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Networks, GAN)というAI技術を応用しました。しかし、手塚マンガには機械学習に適した「正面を向いた顔」が極めて少ないため、約4,500枚のキャラクターの画像をAIに学習させた場合においても、キャラクターとしての完成度にばらつきが生じました(図2)。そこで「転移学習」を導入し、人間の顔の特徴を数十万枚規模のデータから学習したAIに、手塚マンガのキャラクターを追加学習として学ばせることで、手塚マンガらしいキャラクターを生成できました(図3 )。

図2 初期生成結果
図3 最終的な生成画像例